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ワンキャンパスで学んだ先輩たちのストーリーを大学生のインタビューでお伝えします。

Stories - 卒業生インタビュー - 企画について

【目的】
成城学園同窓会は、同窓生相互の親睦を図り、かつ母校の発展に協力することを目的として設立され、
これまでに多岐に亘る事業活動をしてきました。
事業活動の1つとして学生支援も行っています。

今回は、経済学部の境新一先生のゼミ生と連携し、
「実社会に向けて見識を深められる機会を提供できれば」という学生ファーストの視点で、
各業界で活躍中の卒業生へのインタビューを通じ、社会人形成期にあらたな発見と知見を拡げられる
支援を企画しました。

 

第14回卒業生インタビュー

取材日時:2024年12月9日(月)13:00~14:30

取材相手:映画・ドラマ助監督 武鑓加恵氏(48回文芸)
インタビュア:経済学部境新一先生ゼミ生(3年生5名)

 



成城大学の良いところは何ですか。

キャンパスがワンキャンパスで狭いからこそ友人との距離も近く、学年学部を超えての仲間もたくさんできることだと思います。講義が無くても大学に行けば誰か友達に会えるキャンパスライフはとても充実していました。
入学前に高校の同級生から「成城大学の大学祭は盛り上がるらしい」と聞いていたので、1年生の時に大学祭実行委員会に入りました。成城大学の大学祭は聞いていた通りとても熱気があり、在学4年間学業と同じくらい力を注ぎ、友人たちと一年一回のイベントに力を尽くしました。

 

今のお仕事を選んだ理由を教えてください。
高校生の時から映画鑑賞が好きで、ビデオレンタルショップや映画館に足しげく通っていました。
今やインターネットで何の情報でも手に入る時代ですが、当時の私には外の世界を知る事ができるものはテレビかラジオか映画で、その中でも映画が一番私の世界を広げてくれるものでした。
また、大学祭実行委員会で「祭」作りに夢中になったことも、制作する仕事に携わりたいという思いを強めるものでした。
就職活動は映画を制作したいと映画会社等を複数社受けましたが、就職活動自体が自分に合っていないと思い途中で止めてしまいました。大学卒業後も就職せずにアルバイトをしていたのですが、アルバイト先の飲食店で映画監督やテレビ番組で総合演出、プロデューサーをしている李闘士男監督の会社の方と知り合い、制作スタッフの一員として誘っていただいたことが映画の世界で働くきっかけとなりました。

働き始めてから感じた就職前とのギャップは何かありましたか。
最初は嵐がMCを務めていたバラエティ番組に配属されました。映画制作が出来ると思って入ったので、テレビ番組を制作するなんて思ってもいなかったのですが、実際やってみたらとても楽しい仕事でした。ほぼ毎週ロケ撮影に出て、撮った素材をディレクターが編集をして、テロップをつけて、音楽やナレーションをのせて、最終的に1本の番組に作り上げていくその過程とスピード感に面白みを感じました。私はそのままテレビ番組のディレクターになることも考え始めていました。
そんな時、李闘士男監督の『ガンジス川でバタフライ』というインドを舞台にしたテレビドラマの仕事に携われるチャンスがあり、その作品をきっかけにドラマの助監督をさせていただくことになりました。
ドラマは、台本に書かれていることを勉強して、じっくり考えて、一つの場面を納得いくまで何度も撮り直したり同じ瞬間を色んな角度から撮ったりと一つの事を突き詰めていく「持続力」が求められる現場でした。テレビのバラエティ番組だと「今」おもしろいことを実践して残していく「瞬発力」が求められましたが、一方でドラマではバラエティ番組と違って求められるスピードや優先しないといけないものが全く違うことを学びました。
その後私はバラエティ番組からは抜けて、ドラマや映画の方に進み、その中でも特に映画に携わっていくことになります。
先に全く違うと言いましたが、バラエティ番組もドラマも映画も最終的にはひとつの作品にして観客に見てもらうというゴールは一緒です。想定外でしたがバラエティ番組をやらせていただいたことが、今の映画での仕事にも活かせている思います。

 

仕事のどういったところにやりがいを感じますか。
助監督は主に制作に必要な段取りを執り行う仕事です。監督の演出を確認、時に提案をし、各部署に伝える役割を担います。
その中でも感情的なことや感覚的なことを伝える時は特に気を使います。
例えばある監督がある人物を映画の中で描くとします。男女の違い、年齢の違いなどで、その役を演じる俳優さんとその人物に対する捉え方の違いは少なからずあります。更には撮影時に「そんなことは思わない」「こんなセリフ言うわけがない」みたいな齟齬が生じることもあります。そんな時は監督と俳優さんの間に入って双方の意見を尊重しながら違う意見を一つにしていきます。もちろん全部が全部上手くいくわけではないのですが、作品作りの手助けが出来ることに、この仕事の楽しさとやりがいを感じます。

仕事に活かすことのできた大学生時代の経験は何かありましたか。
私が所属した文芸学部文化史学科には、古文書を読む授業があったのですが、これは時代劇に携わった時にとても役立ちました。映画に出てくる巻物や手紙などを制作する際に、助監督は当時どんなものがあったか調べたり、実際に当時のものを読んだりしなければいけません。当時の授業で古文書に対する免疫をつけてもらったお陰で臆することなくそれらに向き合えたと思っています。

そして、文化史学科の授業で教わって今でも心に残っているのは「アメリカは人種のサラダボウル」という言葉です。サラダボウルの中には様々な野菜が入っているけれど、個々の野菜が混ざり合って一つになることはない。でも、個々の野菜がそれぞれ調和しながら一つの料理としてまとまっています。アメリカも多人種、異民族が集まり混在することで、新しい文化が生まれていきます。でも、それでいて、それぞれがそれぞれのルーツを大切にしており、周りに染まらなければならないということはありません。この言葉を今の仕事をしていて思い出すことがあります。いろんな人の考えや思いが入り混じって、新しい何かが生まれていく感覚はいつも感じています。このような考え方を大学時代に文化人類学として学ぶことができたのは、仕事をする上での手助けになっています。

 

大学生へ向けて伝えたいこと・将来大切だなと思うことを教えてください。
自分の垣根を自ら越えて、色んなところに出かけ沢山の人たちに会い様々な考えを知る機会を自ら増やす努力をしてほしいと思います。

自分を今とは違った環境へ連れて行ってくれる人やモノや事を増やして、その一つ一つの出会いを大切にしてください。

【編集後記】
今回は映画・ドラマ助監督のお仕事をされる武鑓加恵さんにお話を伺いました。インタビューを通じて、どのようなお仕事なのか、苦労や魅力など様々なことを学ばせていただきました。普段聞くことの出来ない、裏話などを実体験を元にお話ししてくださり、大変興味深い、貴重な時間を過ごさせていただきました。武鑓さんはコミュニケーションをとる時に、特に相手の細かい表情をよく見るとおっしゃっていました。インタビュー時もインタビュアの目を見てそこから会話を広げてくださる気遣いに感激しました。相手の表情をよく見ることの大切さ、上手なコミュニュケーションの取り方、この先参考になる事ばかりで良い機会となりました。

 

成城大学経済学部 境新一ゼミ

甲斐遥也(経済学部3年生)
吉川亮太(経済学部3年生)
及川順生(経済学部3年生)
神野 颯(経済学部3年生)
北谷圭人(経済学部3年生)

後列左から 鈴木小夜子(常任委員)、本田敏和(事務局長)、神野颯、境新一先生、鈴木佳奈(事務局)
前列左から 吉川亮太、及川順生、武鑓加恵氏、北谷圭人、甲斐遥也