ワンキャンパスで学んだ先輩たちのストーリーを大学生のインタビューでお伝えします。
Stories - 卒業生インタビュー -企画について
【目的】
成城学園同窓会は、同窓生相互の親睦を図り、かつ母校の発展に協力することを目的として設立され、
これまでに多岐に亘る事業活動をしてきました。
事業活動の1つとして学生支援も行っています。
今回は、経済学部の境新一先生ゼミ生と連携し、
「実社会に向けて見識を深められる機会を提供できれば」という学生ファーストの視点で、
各業界で活躍中の卒業生へのインタビューを通じ、社会人形成期にあらたな発見と知見を拡げられる支援を企画しました。
第2回卒業生インタビュー
取材日:2021年12月6日(月)15:00~16:30
取材相手:日本サンドイッチ協会会長 唯根命美氏
(43回文芸C)
Q.ご卒業と共に海外に行かれるなど、若い時から世界に目を向けられましたが、幼少期はどんな環境で育ったのでしょうか。
A,成城大学の出身であった両親が、成城の雰囲気が好きだったので、私を成城学園に入れてくれました。自分で成城学園を選んだ訳ではないのですが、とても幸せな環境で過ごせたと今でも感謝しています。
幼稚園から大学まで、ずっと成城学園で育った生粋の成城っ子なので、幼少期の思い出は成城学園一色。成城学園のお陰で、今でも繋がりのある家族みたいな友達ができました。当時は成城学園の近くに住んでいた上、両親がパーティーの開催をよくしていたので、常に自宅に誰かが来るような状態で、とても賑やかな楽しい環境で育ちました。
Q.大学時代はどのように過ごされたのでしょうか。
A.エスカレーター式だった為、あれこれ考えずに大学へ進みました。
ただ、イギリスなどのヨーロッパに行きたいという気持ちがあり、大学を終えて行こうという考えがありました。大学では文芸学部の芸術学科に入り、津上教授のもとで美学を学びました。真剣に勉強しているうちに自分が学んでいる分野の面白さに気づくことができ、人生で一番勉強したと思えるくらいに充実していました。
また、学校には友達に会う為に行っていました。勉強よりも友人関係が1番楽しかった思い出として印象に残っています。
Q.今の仕事で役立っていると思う大学での学びはありますか。
A.芸術学科に入ったことで、物事を多面的に見る力を身に付けることができました。そのお陰で、「これはこんなやり方ができるかな」というように、あれこれ柔軟に考えながら働くことができています。
Q.ご卒業後にロンドンに行かれましたが、ロンドンを選んだ理由は何だったのでしょうか。
A.ヨーロッパに行きたいというのは確実に決まっていました。英語が少し喋れるようになったらイタリアやスペインに行って料理を学びたいと思っていたので、その二国に近いイギリスを選びました。また、姉がロンドンに留学していたのも大きな要因になりました。当初はイタリアやスペインに行くことが目的でしたが、実際にロンドンで過ごすうちにロンドンという街の魅力・面白さに気づいて、ロンドンが大好きになりました。
Q.イギリスで大人気のジェイミー・オリバー氏(1999年から最も数多くのテレビ番組に出演の人気シェフ)との出会いについてお聞かせ下さい。
A.ジェイミーはイギリスですごい人気で、テレビや本で頻繁に見かけていました。本人に会えたのは自分で努力したとかではなく、ただ運が良かったからです。実は、友達の姉がフードスタイリストとしてジェイミーの側近で働いていて、是非紹介して欲しいと友達に頼んだ所、次の週からテレビの撮影現場に参加させていただくことができました。ただただラッキーでした。
Q.ジェイミーの現場で学び、現在に役立っていることはありますか。
A.スタイリングの仕方とか、センスが磨かれました。今でこそ日本のスタイリングは評価されていますが、当時は海外のスタイリングの方が料理の美味しそうな雰囲気が伝わりやすく、自分にとっては素敵に見えました。現在もスタイリングをする際は、イギリスで身に付けた感覚を大切にしています
Q.帰国後はフードスタイリストとしてご活躍されていますが、フードスタイリストとはどのような仕事をするのでしょうか。
A.自分としては、料理研究家や料理家、フードコーディネーターなど食に関する仕事を全般的に担うという意味を込めて、フードスタイリストと名乗り始めました。例えば、レシピを作ったり、料理を作ったり、お店のメニューのプロデュースをしたりしています。世間ではあまり知られていませんが、現在ではフードスタイリストとして活躍する人も出てきたし、海外ではフードコーディネーターというよりもフードスタイリストの方が馴染んでいます。
Q.これまでにどんなメニューのプロデュースを手掛けてきたのでしょうか。
A.有名なチェーン店でワインに合うおつまみ三種を考案することがあります。
また、一押しの食材を取り入れたメニューを価格の指定付きで依頼されるなど、結構無茶振りなこともありますが、何度も試作を重ね、お店の依頼に応えられるよう頑張っています。他では某家具屋のインスタグラムに載せる料理を月3品作って、撮影を行うといった依頼も受けています。
Q.次に日本サンドイッチ協会について伺いたいと思います。どういう経緯でサンドイッチ協会を作ろうと思ったのでしょうか。
A.サンドイッチはイギリス発祥で、ギャンブル好きのサンドイッチ伯爵がゲームをしながら片手で食べられるものを、ということでパンに肉を挟んだものが原型と言われています。その発祥の地イギリスに行っていましたが、帰国後しばらくフード関係の仕事をしていました。その中で自分の軸足になるものを探していた時、イギリスから帰国した友人と会い、折角ならイギリス関係のモノで何か面白いことをしようという話になりました。フィッシュアンドチップスだと広がりがない、ローストビーフやアフタヌーンティーも中々難しい、ということで「サンドイッチがいいのではないか」という結論に至りました。当時は協会の立ち上げが多かったこともあり、世界に様々なサンドイッチを広めるのも楽しいという気軽な気持ちでスタートしました。
Q.サンドイッチ協会はどういった活動をしているのでしょうか。
A.2015年に立ち上げましたが、普通のサンドイッチでは注目されにくいと思い、見た目はケーキだけど食べるとサンドイッチ、というあまり見たことがないものを提案しようと思いました。北欧にはスモーガストルタという、ホームパーティーなどでよく食べられる、ケーキみたいなサンドイッチがあります、それを原型にして日本人にも覚えてもらいやすいよう、「ケーキイッチ」という名前を付け、商標登録を行いました。「ケーキイッチ」を広める為、まずは講座を毎月開きました。するとすぐに出版のオファーがあり、大急ぎで30~40品レシピを作り出版しました。それが話題となり、グルマン世界料理本大賞(料理本のアカデミー賞)サンドイッチ部門でグランプリを取り、世界1位に選ばれました。これをきっかけにテレビ出演など活動の場が広がりました。
Q.講座の他、サンドイッチ協会を広めるために行っていることはありますか。
A.サンドイッチフェスティバルという、大きな食のイベントを中野で開催する予定でしたが、コロナ禍で中止になってしまいました。このように講座だけでなく、世界のサンドイッチを集めたイベントをしたいと思っています。
Q.唯根さんの料理はオシャレなものが多い印象です、例えば「ケーキイッチ」とか。でもその一方で、「これはサンドイッチではない」と思ってしまうことがありました。「ここまではサンドイッチ」という定義はありますか。
A.「パンやパンに値するものに、おかずとか野菜を挟んでワンサンドで気楽に食べられるもの」っていうのがサンドイッチだと思っています。
でも料理はどんどん進化していて、フュージョン料理とか言われるように、「ケーキイッチ」はサンドイッチから派生したものです。サンドイッチの定義からは外れてしまうと思うんですけど、「サンドイッチとケーキの中間として見てください」というイメージです。
Q .定義から外れたサンドイッチの中で、美味しいのものはありますか。
A.日本ではコンビニなどで売られているトーストしていないサンドイッチの方をイメージする方が多いのかもしれませんが、イギリスではトースティと言って人気があります。私が一番好きなサンドイッチはチーズトースティっていうんですけど、ロンドンのバラマーケットという様々な屋台が出ている場所があって、そこで食べたんです。サンドイッチにチェダーチーズとかカリカリに焼いたチーズが溶けて、ものすごく美味しくいただきました。
Q.チーズトースティのような料理を「サンドイッチの派生系」として受け入れて捉える事ができるのは、成城で学ばれた物事を多面的に見られるようになった価値観なのでしょうか?
A.成城の教えは自分の人格が形成される上ですごく軸となっています。自由というか、個性尊重の教育だとよく言われますよね。小さい頃から、みんな違ってよい。私自身も好き勝手にやってきて、だからこそ物事に対して柔軟性を持てたっていうのは大きいと思います。人と同じことしてなくても、自分はこれでいきますっていう自信と信念さえあればいいと感じています。
Q.今後の展望としてどういったことをお考えでしょうか。
A.サンドイッチ業界からパン業界まで盛り上げていきたいと思っています。今はケーキイッチしか出せていないため、世界のサンドイッチの講座や、手軽にできるサンドイッチ等の本、サンドイッチ用のグッズを出していきたいと考えています。
Q.最後に尊敬している人物や大切にされている言葉を教えて下さい。
A.祖父を尊敬しています。祖父は福田赳夫元首相の甥っ子にあたります。元々親がいない苦しい状況で育ちましたが、必死に勉強をして大蔵省に入省しました。その後は独立して経済学博士になったという素晴らしい経歴を持ってます。
大切にしている言葉(自分のポリシー)は、「実るほど 頭を垂れる 稲穂かな」。松下幸之助もこの言葉を信条としていると知ったときは嬉しかったです。「上の立場になっても常に人に対して謙虚であれ」という考えは、昔から自分の中に根強くあり、仕事の時や人と接する時に意識しています。
本日はお忙しい中、貴重なお話を賜り有難うございました。
事業支援委員 宮地藤雄、同窓会会長 細田泰、事業支援委員 もたい五郎
【編集後記】
第2回のOBOGインタビューでは、フードスタイリストで日本サンドイッチ協会会長の唯根命美様にお話を伺いました。当日、唯根様には2時間程度お時間をいただき、記載した以外にも多くのお話を伺いました。
唯根さんは成城学園の個性尊重教育の下で、好きなことや自分のやり方を否定されずに育ち、自分のやり方に自信を持つことができたと話していました。
自分のやり方を認めてもらったからこそ他人の個性やフュージョン料理など、型破りなものを受け入れるのかもしれません。そうして多くの価値観を自分のものにした結果、「ケーキイッチ」が生まれたのなら、「ケーキイッチ」とは唯根さんの個性がそのまま形となった料理なのだと思います。お話の中で、コロナ収束後の文化祭時には、境ゼミでサンドイッチのお店を出店し、その監修を唯根様にお願いしようという話になり、大変盛り上がりました。その時まで境ゼミと唯根様との繋がりを維持していきたいです。
成城大学経済学部 境新一ゼミ
佐藤政貴(経済学部3年)
吉井美月(経済学部3年)
山老祐弥(経済学部3年)
写真撮影:佐藤 政貴